新古敏朗
湯浅醤油有限会社・社長

数年前にイナゴソースの技術指導の話しから始まり、NYタイムスにも掲載された。
また、デンマークのnomaレストランが、昆虫調味料を試作していて、交換してみたり、昆虫食に関するメンバーの出会いからシルクプロテインのアドバイスをいただきました。
湯浅醤油の発酵技術を応用して、繭(蚕無し)で試作をしてみたところ 驚きの結果がでました。
シルクが、甘い! 甘いアミノ酸が大量に含まれているたんです。
日本から、シルクロードを経て世界に驚きの調味料をヨーロッパの一流シェフに届けようとシルクロードプロジェクトを立ち上げる事になりました。


佐藤裕一
昆虫エネルギー研究所・代表

” 麹菌により大豆のタンパク質が分解されて醤油ができるのなら、タンパク質が多く含まれている繭を発酵させてみたら醤油ができるのでは? という冗談のような話から始まったのがこのプロジェクトです。
和歌山の湯浅町で135年の伝統を持つ「湯浅醤油有限会社」にて 2016年に試作を行ってみたら、甘みと旨味が強く、奥深く優しい味わ いの濃口醬油のような液体調味料が完成しました。
醤油とは「穀物を原料とし、醸造技術により発酵させて製造する液体 調味料」のことですから繭を原料としたものは厳密には醤油ではないのですが、我々はこれを「シルク醤油」と名付けました。
その後も試行錯 誤しながら4回の試作を重ね、ますます美味しいものができています。
しかし前例のない挑戦なので、研究すべき余地はまだまだあります。
また「シルク醤油プロジェクト」はただ目新しいものを作るのことが 目的ではありません。
醤油発祥の地、和歌山県湯浅町の伝統と技術を受 け継いで、先人の想いを伝えていきたいのです。
伝統を受け継ぐと言い ながら伝統を壊しているではないか と思う方もいらっしゃるかもしれ ませんが、温故知新「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」と いうことです。
先人たちが残してくれた技術で、新しい挑戦をしたいの です。伝統や技術を受け継ぐということは、ただの模倣ではいけませ ん。
文化という「生き物」を「剥製」にして命を奪ってはいけません。
先人たちもその時代の状況に合わせて試行錯誤し、新たな挑戦を続けて きたのです。
また、人口の増加や地下水の枯渇などで世界的に穀物の不 足・高騰が起こりつつある中で、穀物以外の原材料で醤油作りの技術を 確立させることは重要であると考えています。
そもそも醤油を初めてつ くったという大挑戦があるのです。
原料であるシルク=マユですが、日本書紀にもカイコの記述があるほ ど日本人とは長い付き合いです。
漢字では、天の虫と書いて蚕です。最近の研究では、日本でも弥生時代から養蚕が行われていたと考えられていて、人類にとってカイコは犬に次いで古い家畜だそうです。
日本の養蚕は明治時代に隆盛期を迎え外貨獲得産業として日本近代化 の礎を築きました。
1935年ごろの日本ではカイコの餌となる桑の木が 14億本もあったそうです。
「お蚕さま」という半ば神格化した呼び方が 残っていたり、「1匹、2匹」ではなく「1頭、2頭」と呼ばれることか
らカイコは日本人にとって特別な昆虫なのです。
世界一の品質といわれた日本の絹も、その後ナイロンの発明などにより廃れてしまいました。
発酵食品と同じく世界に誇るべき日本の養蚕の 技術と知恵は後世にも残すべき価値が大きいものであります。
現代の日本で養蚕は壊滅状態で、今では和歌山県に養蚕農家はありま せん。湯浅町のある有田はみかんの栽培が盛んです。
みかんと養蚕は農 繁期が違うので、みかんの裏作に養蚕はぴったりです。
養蚕を行うため の桑畑は農薬を使うことはできませんし、近くに農薬を使用する農家が あるとカイコが死んでしまいます。その点、有田では無農薬のみかんを 作る若い人たちも多いので、シルク醤油プロジェクトが軌道に乗れば、 無農薬みかん農家の農閑期の現金収入の可能性があると思われます。
痩せた土地でもすくすくと育ち二酸化炭素を多く吸ってくれる桑は無農 薬・有機栽培と相性がよく、持続可能な社会作りに貢献できるはずです。
また養蚕は軽作業なので、高齢者の雇用問題の解決になる可能性も高く、養蚕を始める若い人が増えれば技術を教える高齢者との世代間の交流が期待できます。
シルクの中心繊維のフィブロインというタンパク質は肌のコラーゲン と深く関係のあるグリシンやアラニンを主とした18種類のアミノ酸で 構成されています。
化粧品などに使われるシルクプロテインですが、食べるシルクサプリなどもあり美白、美肌効果。薄毛や高血圧に効果があるといわれています。
また胃腸の粘膜を守ったり、基礎代謝を高めるの でダイエットにも効果があるといわれています。
そのように非常に効能 の高いシルクですが、発酵によってその成分がどのように変化するのか、栄養成分の分析も行いたいとも考えています。
我々の新しい挑戦には、日本人が世界に誇るべき豊な発酵食文化と養蚕技術を残してくれた先人たちもきっと喜んでくれると信じています。
醤油発祥の地・湯浅から世界に発信できる「シルク醤油」を開発し、シルクロードを渡って日本の伝統を世界に伝えたいです。
そして、次世代を担う子供たちに日本を誇らしく思う気持ち=気づきを提供し、美しい日本を伝えていきたいと思っています。どうか応援をよろしくお願いします。”